【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第3章 「咲きて散る、時の花 前編」
「……あー、もう……」
五条さんは深々とため息を吐くと、私の顔をちらりと見て、それからゆっくりと近づいてくる。
「万が一お前がここで死んで、俺の輝かしい未来が変わったらマジで迷惑だから……それだけだからな」
そう言って、彼は私の額をぐいっと指で突いた。
「いたっ……!」
思わず額を押さえると、五条さんは口元をわずかにゆがめて、私の顔を覗き込んだ。
「足、引っ張んなよ」
ぶっきらぼうなその一言に、私は小さく息を呑んだ。
「……あ、ありがとうございます、五条さん」
そう言うと、彼は「チッ」と舌を鳴らして、ぷいっと背を向けた。
すると、先生が横からぱちぱちと拍手を送ってきた。
「さっすが若き日の僕、頼りになる~!」
「お礼はちゃんともらうからな」
五条さんがにらみつけると、先生は両手をあげて答える。
「はいはい、考えとくよ」
私は部屋の隅に置いてあった呪具を手に取り、ドアの方へ向かった。
そのとき――ふと、背後からひそひそとした気配がした。
(……?)
振り返ると、先生が五条さんの耳元に口を寄せて、なにか小さく囁いていた。
それから、五条さんがちらっと私を見た。
すぐに視線を逸らしたかと思えば、もう一度ちらりと。
(……?)
なぜか、その目線がやたらと気になって、私は思わず首をかしげてしまった。
話が終わったのか、先生は私のほうに向き直って、明るく手を振る。
「いってらっしゃ~い! 仲良くするんだよ~!」
先生のひょうきんな声が背後から響く。
五条さんは振り返らず、長いため息を吐いた。
そして、少しだけ歩みを止めて、私の方をちらと振り返る。
「……行くぞ」
短くそう言って、また前を向いて歩き出す。
私は呪具を握る手に力を込め、彼の背中を追うように歩き出した。