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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」


(……夏油さんは……)


一瞬、息が詰まる。


今この時代の五条さんは――何も知らない。
私はあまりにも大きな“未来”を、彼の前に差し出すことができなかった。

 

「……えっと、硝子さんは……医務室で、医師として働いてます」

「やっぱ医者か、硝子だもんなぁ」
 


五条さんは嬉しそうに笑って頷いた。
なんの迷いもない、その反応がまぶしくて――胸が締めつけられる。


(今ここで、五条さんに全部話したら……)

(未来で二人が別れることも、夏油さんがあんなふうになることも、変えられるのかな)


でも、それは――“未来を変える”ということ。


私が戻れなくなるかもしれない。
先生と、もう二度と会えなくなるかもしれない。


言えない。
言ってはいけない。
でも、言ったら――先生の、あの悲しみや痛みをなくしてあげられるの?
 


「……夏油さんは」



声が自然としぼんでいく。
でも、その先はどうしても口にできなかった。

 
五条さんは気づいた様子もなく、

 

「傑も先生やってんの?」

 

 
言葉が喉でひっかかる。


(……ごめんなさい、五条さん)


私は嘘をつくのも、ありのままを話すのも、どちらも選べなかった。



「……私は、夏油さんに会ったことなくて。だから……わかんないです」

 

ほんの少しだけ、視線を落としてそう言った。

 

「ふーん。が知らないってことは、傑は先生やってないのか」



五条さんはどこか納得したように息を吐く。

 

「――あいつの方が向いてそうなのにな」



その笑顔を見た瞬間、私は思い出した。
未来の“先生”が、少し寂しそうに笑いながら言っていた言葉を。
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