【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第3章 「咲きて散る、時の花 前編」
***
私たちは無言のまま、寮の廊下を並んで歩いた。
五条さんはずんずんと先を歩いていく。
私はというと、その背中を見失わないように必死についていった。
(……こうして二人で、誰もいない廊下を歩くのって……)
(未来でもあることなのに、なんだか――変な感じ)
階段を上がる音がやけに響いて、見慣れたはずの高専の寮がまるで別の場所みたいに思える。
“過去”というだけで、空気の色さえ違って見えた。
五条さんは男子寮の一番奥の部屋で、ふと足を止める。
「ここ」
そのまま無造作に扉を開け、先に中へ入っていく。
「……入れよ」
小さく頷いて、私はそのあとを追うように足を踏み入れる。
(先生の部屋だ……)
(……あ、でも。マンションにはこの前、連れて行ってもらったな)
部屋の中は整っていたが、生活感と少年らしさが混ざっていた。
ベッドと机、本棚。
窓際には制服の上着。
乱雑に詰め込まれた参考書。
そしてテーブルの上には、小さなゲーム機と飲みかけのペットボトル。
(……ゲーム、するんだ。ちょっと意外)
マンションの部屋は、“大人の男の人”って雰囲気だった。
でも、ここは“同世代の男の子”って感じで親近感が湧く。
それでも、部屋の中には確かに先生の匂いがあって、少しだけほっとする。
「そこ、座れば」
「……はい」
言われて、ベッドの端に腰を下ろす。
どこに手を置けばいいかわからなくて、膝の上で指先を重ねた。
五条さんは部屋の奥でペットボトルの水を一口飲むと、こちらをちらと見る。
そして、少し間を挟んで私の隣に腰を下ろした。
私は思わず、少しだけ身を強張らせてしまう。
でも五条さんはそんな私の反応を気にするふうでもなく、話し出した。
「教えろよ、未来のこと」
「……え?」
少しだけ身を乗り出してくる五条さんの瞳が、茶化しながらもまっすぐだった。
「傑は? 硝子は? あいつら、何やってんの?」