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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」


『……絶対、帰ってきて。』

 

あのときの声。
本気で私の無事を願ってくれていた――あの人。

 
(帰らなきゃ……先生のところに。約束したもん)

 
先生のことを考えると、目の奥がじんと熱くなる。


そのとき――

 

高専時代の先生の視線が、ふいにこちらに向いた気がした。
何かを言いかけて、やめたような間。

 

「……はぁ」

 

聞こえたのは、小さなため息。
投げやりとも、呆れとも違う、どこか――ほんの少しだけ、柔らかさを帯びた音だった。



「だから……お前はここで、大人しくしてろってこと」



先生が気だるそうにそう言い切った。



「そのもう一人の術師が有能なら、すぐ帰れるだろ?」



その一言に、さっきまで張りつめていた気持ちがほんの少しだけほどけた。 


(……ごめんね、虎杖くん。巻き込んじゃって……)

(でも、今はもう――任せるしかない)


私はただ、心の中で手を合わせるように、虎杖くんの無事と任務の完了を祈った。



「でも、戻れるまでは身を隠してたほうがよくない?」

 

硝子さんの落ち着いた声が響いた。

 

「他の人に見つかると、面倒だし。夜蛾先生にバレたら話がややこしくなりそう」

「……!」



たしかに、それは想像しただけで冷や汗ものの展開だった。

 

「そうだね。ちゃんのことは私たちだけの“秘密”にしよう」

 

夏油さんが頷き、視線を先生へ向ける。

 

「じゃあ――悟、あとは頼んだよ」

「はあっ!? なんで俺なんだよ!」

 

先生が跳ね上がる勢いで立ち上がった。



「硝子の方が適任だろ!」

 

慌てて硝子さんのほうを指差す。



「私、これから任務の付き添い」

 

硝子さんはタバコを取り出しながら、気だるげに答えた。



「おい傑! じゃあお前は……!」

 

すがるように振り返った瞬間、

 

「悪い、私も夜蛾先生に呼ばれているからね」

 

夏油さんは困ったように笑って、肩をすくめる。
そして――


追い打ちをかけるように、一言。
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