【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第3章 「咲きて散る、時の花 前編」
私は、あわあわと二人のやり取りを見守るしかなかった。
(でも……本当に仲がいいんだな)
ふざけ合いながらも、絶妙な距離感でやり取りしていて――
お互いの言葉の“熱”を知っているような、そんな空気だった。
(信頼してるのが、よくわかる)
だからこそ、心のどこかに痛みが走る。
先生の記憶で見た、二人の別れ。
(――この二人に、何があったんだろう)
(どうして……)
教室に響く笑い声と騒音の中で、自分だけ冷えていく感じがした。
そんなとき――
「夏油ー、夜蛾先生が呼んでるよー」
間延びした、けだるそうな声が教室に届いた。
「……あっ」
私は思わず、扉の方へ視線を向けた。
そこに立っていたのは、一人の女の人。
紺の制服に身を包み、ポケットに手を突っ込んだまま、気怠げに背中をドアの枠に寄りかかっていた。
(硝子さんだ! 髪が短い)
そんな彼女の姿を見た先生と夏油さんは――
「……あっ、硝子」
先ほどまでの大騒ぎが嘘のように鎮まる。
「なにしてんの?」
硝子さんが片眉を上げて、めんどくさそうに言った。
「なんでもねぇし」「なんでもないよ」
先生と夏油さんがほぼ同時に、しかも明らかに動揺した声で答えている。
「ふーん……ま、いいけど」
硝子さんは視線を一度だけ二人に投げてから――
「で? この子、だれ?」
指をさされた私は、反射的に背筋を伸ばした。
(あ、どうしよう、なんて説明すれば……!)
そんな内心の大混乱をよそに、夏油さんが淡々と説明を始めた。
「実はね――」
しばし、硝子さんと夏油さんの間で会話が続く。
「――っていうわけだよ」
説明を締めくくった夏油さんが、肩をすくめて笑う。