【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第3章 「咲きて散る、時の花 前編」
この人は、ときどき。
とても寂しそうな顔をする。
「……っ」
言葉に詰まったままの私に、先生の顔がそっと傾く。
視線が絡まって、離れなくなる。
鼓動が跳ねるたびに、先生の息遣いが、私の頬を撫でて――
唇が重なった。
(……っ、ん)
息を吸いたいのに、吸うより先に“感じる”ばかりで、
唇に残る熱が身体の奥に滲んでいく。
ゆっくりと、角度を変えながら
唇がなぞるように重ねられる。
(だめ、頭ぼーっとする……)
唇と唇が密着したまま、わずかに吸われるような感覚が伝わってくる。
ようやく唇が離れたとき、
先生の指が名残惜しげに頬をなぞった。
「――この続きは、任務から帰ってきてから」
(この続きって……)
火がついたように顔が熱くなっていく。
視線も合わせられなくて、思わずうつむいたそのとき――
「絶対、帰ってきて。」
唇の端を上げて、余裕たっぷりで笑うくせに。
その声はひどく真剣だった。
私は黙ってうなずいた。
ちょうどそのとき、廊下の奥から虎杖くんの大声が響いてきた。
「~! おいてくよ~!」
その声に、先生は小さく息を吐いて笑う。
「悠仁は、元気がありあまってるね」
そう言いながら、私の頭にそっと手を伸ばし、くしゃっと優しく撫でた。
大きくて、あたたかくて、全部を包んでくれるみたいな手。
不安も、迷いも――和らいでいく。
「……なら、大丈夫。僕が保証する」
そして、ふっと目を細めて。
「いってらっしゃい」
小さく落とされたその言葉に、私は――
(……先生、気づいてたんだ)
平気なふりをしていた。
大丈夫なふりをしていた、自分の中の小さな不安と恐怖。
それを、ちゃんと見抜いてくれた。
そして、責めることも笑うこともなく、信じて背中を押してくれた。
その優しさが、あたたかさが。
なによりの力になる気がした。
「……はい、いってきます」
先生の手の温もりを、まだ感じながら。
私はひとつ深く息を吸って、教室をあとにした。