【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第3章 「咲きて散る、時の花 前編」
「よっしゃー!、がんばろーぜ!」
横から飛んできた虎杖くんの明るい声に、思わず笑みがこぼれる。
「……うん。がんばろう」
互いに視線を交わし、小さくうなずき合う。
――その時。
コン、コン。
小さくノックの音が響き、私たちは同時に振り返る。
「失礼します。準備、整いました」
扉がノックされ、補助監督が顔をのぞかせる。
「車、出せます。さん、虎杖くん、準備は大丈夫ですか?」
「おっけーっす!」「大丈夫です」
虎杖くんが勢いよく椅子から立ち上がる。
私は一拍遅れて手帳を閉じ、立ち上がった。
「よっしゃ、行きましょー!」
「車は正面玄関前に停めてあります」
そう言いながら、虎杖くんと補助監督は先に部屋を出ていく。
私もそのあとに続こうとした、そのとき。
「――」
背後から呼び止められて、私は振り返った。
先生がいつの間にかすぐ近くまで来ていた。
目隠しの奥にある瞳は見えないはずなのに、どこか真っすぐに私を見られている気がした。
「怪我、治ったばかりなんだから。無理しちゃダメだよ」
その声は、さっきまで見せていた軽い調子とは違っていて。
私は小さくうなずいた。
「……わかってます。気をつけます」
そう言った私の声に、先生は応えなかった。
代わりに――
気づけば、距離が詰まっていた。
「せん、せ……?」
そう言いかけた瞬間、背中が冷たい壁に触れた。
いつの間にか、私は壁際に追い詰められていた。
ほんの数歩、歩み寄っただけ。
先生の顔が近い。
体温が肌に伝わってくるほど近い。
「……また、に何かあったらって思うとさ――」
低く落とされた声が、喉の奥から零れる。
「僕、冷静じゃいられないかも」
その言葉と一緒に、先生の手が私の頬に添えられる。
頬に触れる熱が、胸の奥にまで伝わってきて。
(……なんで、こんなに)
先生は強くて、自由で、いつも自信たっぷりで、なのに――