【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第1章 「香惑の宵**」
五条は、ポケットから小瓶を取り出した。
あの淡い紅色の液体が、照明の下できらりと光る。
「ねえ、」
「……はい?」
「これ、五条家に伝わる“漢方”なんだけどさ。飲んでみる?」
瓶を差し出され、は一瞬きょとんとした後、
眉をひそめて中身をのぞき込む。
「……なんか、怪しい色してますけど……」
「え〜? 失礼な〜」
五条はオーバーに肩をすくめて見せた。
「これね、飲むとね、どんなに疲れてても、翌日は疲れなんて“なんのその”! 朝からスッキリ! 集中力も回復!」
「……じゃあ、悟さんが飲んだほうがいいんじゃないですか? 最近ずっと忙しかったんですよね?」
「僕? 僕はもう飲んだよ。ほら、見て。元気そのものでしょ」
そう言って、五条はどこか悪戯っぽく笑いながら、瓶を彼女の前に差し出した。
「だから、が飲む番。ほら、くいっと飲んじゃって」
はなおも戸惑ったように瓶を見つめる。
でも――悟さんがそう言うなら、きっと大丈夫なんだろう、って。
そんな気持ちが、彼女の中で小さく芽を出していた。
は、おずおずと瓶を受け取った。
蓋をひねると、かすかな“ぽん”という音とともに、
ふわりと甘い香りが立ちのぼる。
「……なんか、甘そうな匂い……」
瓶の口を鼻先に近づけながら、まだどこか疑わしげに五条を見上げた。
「……ほんとに、効くんですか? これ」
五条は、そんな彼女の様子を微笑ましそうに見つめながら、
安心させるように言った。
「うん、大丈夫。恵だって、たまに飲んでるし」
「えっ、伏黒くんも……?」
「そう。任務の後とか、疲れてる時にね。恵もその効果にびっくりしてたよ」
そう言われて、はほんの少しだけ目を丸くした。
そして――
「……じゃあ、飲んでみようかな」
一瞬だけ躊躇ったのち、は意を決したように瓶を傾ける。
くい、と喉が動いた。
淡い紅色の液体が、すべて彼女の体内に流れ込んでいく。