【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第2章 「咲きて蕩けし、夜の花**」
唇が塞がれて、世界がぐるりと反転したような感覚に包まれる。
(ぬ、ぬか……ろく……って……!?)
頭の中が真っ白だ。
けれど、キスの合間にどうにか思考をつなぎとめようとして、は焦ったように瞬きを繰り返す。
(……抜かずに、って……“抜かずに”……って……)
(いや、いやいや待って⁉︎)
(“六回も⁉︎” “抜かずに⁉︎” って――えっ、そんなの……⁉︎)
まるで心の中で警報が鳴っているみたいだった。
さっきまで期待に胸を躍らせていた自分が信じられない。
信じられない言葉の意味が、ようやく輪郭を持ち始めたそのとき――
五条の唇がふっと離れた。
熱の余韻を残したまま、はわずかに目を見開く。
その刹那、昼間聞いた補助監督たちの会話が鮮やかによみがえった。
『でもさ、五条さんって絶対すごそうだよね」』
『てか彼女とかいたら、ほんと大変そう……』
『うわ……私だったら無理かも。絶対ついていけない』
心の中で、何かが轟音を立てて崩れた。
(“すごそう”って、あれって……まさかその、“そっちのすごい”⁉︎)
(大変って、ついていけないって……“六回”の話⁉︎)
(六回って……そんなの、ほんとに……⁉︎)
徐々に意味を理解していく自分に、は頭を抱えたくなった。
(私……ずっと、新しいぬか漬けの話だと思ってた!)
(白ごはんまで持ってきて……私のバカっ!!)
恥ずかしさと衝撃で、心の中が火花散る勢いで爆発していた。
「ははっ、、顔……真っ赤」
五条が悪戯っぽく目を細めて、サングラスをくるくると指で弄んでいた。
「そりゃあもう、トマトみたい」
「~~~っ、トマトじゃないですっ!」
はわずかに震えながら叫び返すと、目を逸らしたままそろそろと距離を取る。
(……ダメだ……このままじゃほんとに“六回”とか……)
(絶対、無理……無理だから……!)
「……あっ、そ、そうだ!」
ひときわ不自然な大声。
「わ、私、思い出しました! 今日、洗濯機まわしっぱなしでした! 急いで戻らないと、あの、菌とか……生えるので!!」