【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第2章 「咲きて蕩けし、夜の花**」
の問いかけに、五条は少し眉をひそめて小さく唸る。
「ぬか漬けね……うーん、あんまり得意じゃないかな。あれ、ちょっと発酵の匂い強いでしょ?」
「あっ……たしかに、ちょっとクセありますよね」
「僕、下戸だからさ。なんか、あの酒粕の匂いと味が、ちょっと苦手なんだよね」
「なるほど……あ!」
ぱっと、の表情が明るくなる。何かが繋がったらしい。
「だから……“ぬかろく”なんですね?」
「……」
その瞬間、空気がぴたりと止まった。
伊地知が手にしていたペンの動きまで止まった気がした。
五条の笑みが凍る。だが次に動いたのは、彼の唇だった。
「……どこで、それを?」
「さっき、廊下で補助監督さんたちが話してて。“五条さんのぬかろくはすごいよね~”って」
「へぇ~……」
五条の声に、妙な含みが混じる。
「それって……漬け方が普通のぬか漬けとは違うんですか?」
「……っふ」
耐えきれず、五条が一度だけ小さく吹き出した。
「そうだね。オリジナルっちゃ、オリジナル」
「やっぱり! どんな味なんですか?」
嬉しそうに身を乗り出す。
五条は、手にしていたペンをくるくると回しながら、内心でいたずらっぽく笑う。
(……盛大に勘違いしてるけど……ま、いっか)
「ぬかろくはね、ちょっとクセはあるけど……深いんだよ。
時間かけて馴染ませて、手間もかかるけど――そのぶん、得られる満足感がすごいっていうか」
「へぇぇ……そんなに手間がかかってるから、美味しいんですね……」
目を輝かせて感心するに、五条は満足げに頷く。
「……も、味わってみる?」
「え、いいんですか!?」
食い気味に即答する。
その瞬間、空気を読んだ伊地知がそっと手を挙げて、慎重に口を開いた。
「あ、あの、それは……ちょっと……」
だが、その声を五条が片手で制す。
「ん〜? 伊地知、空気読もうか」
「いえ……でも、それは……」
「だ〜いじょうぶだって。何事も経験だから」
ひらひらと手を振って笑う五条に、伊地知は諦めたように肩を落とした。
(……いや、絶対“経験”の意味ちがう)