【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第2章 「咲きて蕩けし、夜の花**」
補助監督たちが去ったあと、は書類を抱えたまま、再び歩き出した。
足取りはさっきよりゆっくり。思考は完全に、あの謎の単語に支配されていた。
(……ぬかろく、か……)
もう一度、さっきの会話を思い返してみる。
(えっと……“五条さんはすごい“って言ってて……人によっては無理)
そこまで思い返して、はうんうんと小さく頷いた。
(……悟さんは、自分で漬けるほど、ぬか漬けが好きってこと!?)
(確かにぬか漬けは好みが分かれるし……)
でも、五条がぬか漬け好きなんて、聞いたことがない。ましてや「自家製」なんて。
ふと脳裏に浮かぶ光景――
エプロン姿でぬか床をかき混ぜる五条。
横にある壺には「ぬかろく漬け込み中」と書かれた手書きの紙。
たまに味見しては「うん、今日もいい感じ」なんて言って、嬉しそうにしてる姿。
(なんか……かわいいかも……)
じわっと頬が熱くなる。
(で、“五条さんのを味わってみたい”って……! でも、味わうと死ぬって……あっ!)
ぽん、と手を打った。
(悟さんのぬか漬けは、死ぬほど美味しいんだ!)
(それで、“ぬかろく”って……たぶん、六日間寝かせるオリジナルの漬け方とか!?)
そう思うと補助監督たちの会話も納得できる気がしてきた。
書類を抱え直し、は満足そうに頷いた。
(そんなに美味しいなら、一度食べてみたいなぁ……)
――こうして彼女の頭の中では、「ぬかろく=新しいぬか漬け」という方程式が完成していた。