【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第8章 「アシンメトリー・ナノ・ループ・ビーズ**」
分からない。分からないけど。
見続けていると、余計に怖くなってくる。
目に入る未知のものが頭の中に一気に流れ込んできて、もう何も考えられない。
(私、今もしかして……先生に無量空処されてる?)
わりと本気でそんなことを考え始めてしまった、その時だった。
ウィーン、と。
入り口の方で、自動ドアが開く音が響いた。
びくっとして振り返ると、ちょうど他のお客さんが入ってくるところだった。
若いカップルだ。
男の人は平然と店内を見回していて、隣の女の人も楽しそうに笑っている。
(どうしてそんな普通のデートみたいな顔で入ってこられるの……!?)
帽子を被って顔を隠しているとはいえ、こんな場所にいるのを見られるなんて、恥ずかしすぎる。
(早く、出なきゃ……っ!)
もう何でもいい。
とりあえず、目の前にあった水色の棒を鷲掴みにした。
ついでに、その隣にぶら下がっていた赤いハートのチェーンみたいなものも、勢いのままむんずと引っ張る。
(これで、五個……っ!)
とにかく手当たり次第に二つまとめてカゴに放り込み、そのまま先生の胸元へドンッと押し付けた。
「っ、選びました! これで五個です!」
「お、早いね。……って、ぶっ」
カゴの中身を見た先生が、吹き出すように肩を揺らした。
「見なくていいですから! 早く、お会計……っ!」
「あはは! うん、わかったわかった。、センス最高」
「褒めなくていいですっ!」
笑いが止まらない様子の先生の背中を、ぐいぐいと押す。
どんなセンスで笑われたのか分からないけれど、今はもうどうでもいい。
一秒でも早く、このお店から逃げ出したかった。