【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第2章 「咲きて蕩けし、夜の花**」
シーツがくしゃりと音を立てる。
汗ばんだ掌が、ぐしゃぐしゃと布を掴んだまま、震えていた。
うつ伏せの体を上から覆うように、五条の体温が重なる。
背中に感じる彼の鼓動と吐息が、じわじわと熱を流し込んでくる。
身体の奥まで満たされて――
どこまでが自分のもので、どこからが彼の熱なのか、もう曖昧だった。
(もう……何度目……?)
そんなこと、きっとわかってる。
でも、数える余裕なんてもう残っていなかった。
「っあ、……さと、るさ……」
喉からこぼれた声は、震えていた。
けれどその言葉さえも、彼の唇が塞いでいく。
甘く、深く、吸い込まれるようなキス――
指先が頬をなぞり、肩を抱く腕がじんわりと熱を伝えてきて、
頭の中まで、とろけそうになる。
(どうして……こうなったんだっけ?)
思考の端で浮かんだ問いも、すぐに熱にかき消される。
そのとき、不意に、背後からささやかれるような声が降ってきた。
「、まだ……あと4回、残ってるからね」
「――っ⁉︎」
びくんと肩が震えた。
背中に触れる彼の体温に、もう身体の奥が勝手に反応してしまっている。
そして――視界が、白く、ふっと霞んでいった。
* * *
数時間前――
は事務棟の廊下を急足で歩いていた。
任務は無事に終わり、あとはこの報告書を提出すれば本日の業務は終了。
頭の中では、お風呂と昨日買ったコンビニの新作アイスのことでいっぱいだった。
(今日の任務、走り回って汗かいたな……)
思い出して小さくため息をついた、その時――
「でもさ、五条さんって絶対すごそうだよね」
ぴたり、と足が止まる。
(……今、悟さんの名前が)
聞き覚えのある補助監督たちの声が、曲がり角の先の控室から聞こえてきた。
開け放たれた扉の向こうで、どうやら三人ほどが立ち話をしている。
「ねー! あの人、見た目も中身もバグってるじゃん。絶対……そっちもヤバいって」
「てか彼女とかいたら、ほんと大変そう……」
(……た、大変? 何が?)
まさか自分のことだとは思われていないのは分かってる。
でも、なんだか聞き逃せなくて―― はそっと壁に寄り、足音を殺した。