【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第7章 「背伸びの先にある恋**」
「温かい飲み物でも淹れようか。お腹痛む?」
先生は、そう言ってキッチンへ向かおうと背を向けた。
「あ、ちが……っ、そうじゃなくて……っ!」
慌ててソファから身を乗り出した。
このままじゃ、お泊まりなのに指一本触れられずに終わってしまう。
(どうしよう、どうしよう! 誤解を解かなきゃ! で、でも、なんて言って!?)
頭の中がもう大変だった。
マグロ回避とか、そんな話じゃない。
このままだと、本当に何もないまま終わる。
「待って、先生……っ!」
気づいたら手が伸びていて、背を向けた先生の服の裾をぎゅっと掴んでいた。
先生が振り返って、不思議そうにこっちを見る。
もう、誤魔化せない。
ここで適当な嘘をついたら、「具合の悪い彼女」として、ベッドに一人で寝かされて朝を迎えることになる。
(言うしかない。……言うしかないっ!)
ぎゅっと目を閉じ、服の裾を掴む手に力を込めた。
顔中から火が噴き出しそうなくらい熱い。
「ちが、うんです。……具合、悪くないです」
「え? でもさっき、すっごく苦しそうな声……」
「苦しく、ないです……っ!」
叫ぶように遮って、勢いよく顔を上げた。
「あれは、その……っ、大人の女の、魅惑の吐息で……っ」
しん、と。
リビングの空気が止まったような気がした。
先生がポカンと口を少しだけ開けて、私の顔をまじまじと見つめている。
「……みわくの、吐息?」
オウム返しに呟かれたその単語の破壊力に、今度こそ穴があったら入りたい。
いや、むしろ自分で掘ってでも入りたい。
半泣きになりながら、これまでの経緯を一気に話すことにした。