【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第1章 「香惑の宵**」
硝子はコーヒーを片手にしたまま、じっと五条を見つめていた。
「……あんた、正気?」
「え? なにが?」
五条が首を傾げると、硝子はコーヒーをひと口すする。
そして――吐き捨てるように言った。
「ここには、バカに効く薬は置いてないから」
「ちょっ!? 僕、と仲直りしたいだけなんだけど?」
「そういうのは“薬”に頼るもんじゃない」
「え〜……でもさあ、薬使えば、も僕と仲直りしたいって言うと思うんだよね。 それでそのまま仲直りエッチに突入♡」
「黙れ。口、縫うよ?」
硝子が真顔でメスをちらつかせると、五条はあっさり黙った。
「仲直りしたいなら、あんたなりにちゃんと努力しな」
「努力って、何すればいいの?」
硝子はようやくコーヒーを机に置き、気怠そうに指を立てた。
「の好きなものでも買って謝れ」
「そんなので仲直りできる?」
「少なくとも、薬使って無理やり言わされるよりマシ」
「……ぐっ」
ようやく反省の色を浮かべる五条に、硝子は乾いた笑みを浮かべた。
「じゃ、帰れ」
「えぇ〜、もうちょっと僕の恋の相談乗ってよ〜」
「3秒以内に出ないと、五体満足じゃ済まさないからな」
「わかったってっ!」
五条が慌てて医務室を飛び出していくと、硝子は一人、ため息を吐きながら呟いた。
「……まったく、手のかかる最強だこと」
呆れたように、でもほんの少し、微笑みながら。
──そして後日。
呪術高専の中庭で、ある“目撃情報”が寄せられた。
あの五条悟が、大きな紙袋を片手に、のもとを訪れていたという。
中には、有名洋菓子店のスイーツが山のように詰まっていたそうで――
最初はぷいっとそっぽを向いていたも、
しばらくしてから、少しだけ照れたように笑っていたのだとか。
でも、その日を境に――
五条とが、またふたり並んで歩く姿が増えたのは、きっと偶然じゃない。
……ちなみに。
数日後、五条が“似たような薬の小瓶”をポケットに忍び込ませていたのを見たという目撃情報も、あったとか、なかったとか――。