【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第7章 「背伸びの先にある恋**」
先生が空になったお皿とフォークをローテーブルに置く音がした。
そのわずかな音に、肩がびくっと跳ねる。
ケーキも食べ終えて、映画も終わって。
次に二人の間で起こることなんて……一つしかない。
ゆっくりと、隣にいる先生の気配が動いた。
ソファが微かに沈み込み、私の方へと体を向けてくるのがわかる。
(キスする? キスする?)
膝の上に置いた手を、ぎゅっと強く握りしめた。
「」
「はっ、はい……っ」
裏返った変な声が出た。
自分でもわかるくらい不自然な返事になってしまう。
先生の大きな手が伸びてきて、私の頬をそっと包み込んだ。
少しひんやりとした指先が肌に触れ、そこからじわじわと先生の体温が伝わってくる。
「……眠くなっちゃった?」
耳元をくすぐるような、優しくて甘い声。
(眠いわけない。むしろ目がバキバキに冴えてる……っ!)
慌てて、ぶんぶんと横に首を振った。
ゆっくりと先生の方へ顔を向けると、そこには。
長いまつ毛に縁取られた蒼い瞳が、真っ直ぐ私を射抜いていた。
普段の飄々としたおどけた態度は、どこにもない。
少しだけ開かれた薄い唇と、甘く蕩けるような視線。
そこにあるのは、完全に『大人の男』の顔だった。
(……くる。これは、絶対にキスされる……っ!)
頭の中で、今だ!ここだ!と声がする。
マグロからの脱却。
大人の女への第一歩。
これ以上、先生に『受け身でつまらない』なんて絶対に思わせない。
迫ってくる先生の端正な顔を見つめながら、布団の中で毎晩繰り返した猛特訓の成果を、今こそ発揮すべく全神経を集中させた。
(えっと、まずは……黄金の角度、斜め45度!)
ソファに背中を預けたまま、少しだけ顎を引き、先生の顔を見上げるように首の角度をカクッと固定する。
(よしっ、完璧な角度! これで大人の余裕あるキスが……!)
ぎゅっと目を閉じ、その瞬間を待った。