【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第7章 「背伸びの先にある恋**」
私の意識は、映画でも甘いケーキでもなく、すぐ隣に座る『先生』に全集中していた。
ソファに深く寄りかかり、サングラスも外してリラックスした様子で画面を眺める先生。
ケーキを食べるために少しだけ開いた唇。
すぐ横から漂ってくる、先生がいつも使ってるシャンプーの匂い。
(映画が終わったら……そ、そういう雰囲気になるかな)
手元のモンブランをフォークでつつきながら、頭の中は硝子さんとのやり取りと、ネットのコラムの知識でいっぱいだった。
画面の中では、主人公が敵のアジトをド派手に爆破して見事にヒロインを救出している。
そして、先生が言っていた通り。
信頼していたはずの相棒が、あっさりと裏切って黒幕としての本性を現した。
(……あ、もうすぐクライマックスだ)
膝の上に置いた手がじわりと汗ばんでいく。
隣の先生は、私のそんな必死な葛藤に気づく様子もなく、ただ楽しそうに映画の結末を見守っていた。
画面の中で燃え盛っていたアジトが崩壊し、壮大なオーケストラの音楽と共にエンドロールが流れ始めた。
(……映画、終わっちゃった)
暗かった画面が切り替わり、リビングに落ち着いた光が戻ってくる。
隣で、先生が長い両腕をぐーっと上に伸ばして背伸びをした。
「んー! ケーキも美味しかった。最後、あの裏切ったヤツが派手に吹っ飛んだとこ、最高だったよね」
「うん、ですね」
膝の上の自分の手をじっと見つめたまま、私は上の空で相槌を打った。
(緊張しすぎて……結局あの相棒をどうやって倒したのか全然見てなかった……)
内容なんて、これっぽっちも頭に入っていなかった。
映画の後半はずっと、自分の心臓の音ばかりが耳障りなほど大きく響いていて、画面の爆発音すら遠くに聞こえていたくらいだ。