【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第7章 「背伸びの先にある恋**」
顔から火が出そうだけれど、ここで引き下がるわけにはいかない。
膝の上で組んだ手を、さらにぎゅっと握りしめた。
「私……先生以外に、そういう経験、ないし」
「……」
「大人の先生は、本当は私の反応に呆れてたらどうしようって、ずっと不安で……っ」
硝子さんはふうっと煙を吐き出し、携帯灰皿にトントンと灰を落とすと、ぼそっと呟いた。
「……お前にもし経験があった場合、その相手はもう生きてないぞ」
「え?」
思わず顔を上げて、首を傾げた。
(生きてない……?)
どういう意味だろう。
経験の有無と、相手の生死に何の関係があるというのか。
ポカンとしていると、硝子さんは少し気まずそうに目を逸らした。
「まぁ、なんだ。変な知識なんていらないから、そのままでいいんじゃないの?」
「……でもっ、ネットには『ずっと受け身なのは萎える』って書いてあったし……!」
つい声が大きくなってしまった。
”そのままで”
一番言われても困る言葉が、あっさりと返ってきた。
先生も、いつもそう言う。
「はそのままでいいよ」って。
でも、だからこそ不安なのだ。
硝子さんは、困ったように頭を掻いた。
「うーん……別に、五条に限ってはそういうの当てはまらないと思うぞ。あいつは……」
「でもっ!」
硝子さんの言葉を遮って、私はパイプ椅子から身を乗り出した。
「私、彼女として、もっと先生をドキドキさせたいんです! いつか飽きられて、捨てられたら……わ、私っ……」
鼻の奥がつんとして、目に涙が滲みそうになる。
これ以上、先生に「子ども扱い」されたまま、ただ愛されるだけなのは怖い。
私の勢いに押されたのか、硝子さんは少しだけ目を丸くして苦笑した。