【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第7章 「背伸びの先にある恋**」
「……過呼吸か?」
背後から突然降ってきた声に、肩が大きく跳ねた。
恐る恐る振り返ると。
いつの間にかカーテンが開いていて、ベッドに寝転がったままの硝子さんが、ジト目でこちらを見ていた。
「しょ、硝子さん!? 寝てたんじゃ……!」
「うるさくて起きちゃったよ。なんだ、具合でも悪いのか」
「ち、違います! これは、あの、その……っ!」
手で顔を覆い隠したけれど、耳の先まで真っ赤になっている自信がある。
(見られた……! よりによって、一番見られたくない練習をバッチリ見られた……!)
硝子さんは体を起こし、だるそうに頭を掻きながら私をじっと観察した。
そして、はぁ、と長いため息をつく。
「五条絡みか?」
「…………はい」
両手で顔を覆ったまま、誤魔化しきれずにコクリと頷いた。
硝子さんはベッドの縁に腰掛けると、白衣のポケットからタバコを取り出した。
カチッと静かな医務室にライターの音が響き、細い煙がふわりと立ち上る。
「手伝ってくれた礼だ。話くらい聞いてあげるよ」
煙を吐き出しながら、気怠げな声でそう言われた。
(……え)
てっきりからかわれると思っていたのに。
それどころか、ちゃんと聞いてくれるらしい。
(これって、もしかして……大人の女性である硝子さんに、正しい知識を聞けるチャンスなのでは!?)
ネットのコラムなんかより、ずっと現実的で信頼できるはずだ。
「……あの、私」
「うん」
硝子さんがタバコを指に挟んだまま、先を促すように軽く顎をしゃくる。
「キ、キスが……上手くなりたいんです」
絞り出すようにそう言うと、静かに煙が揺れた。
もう後には引けない。
床に視線を落とし、膝の上で指をぎゅっと絡ませる。
「あ、あと……その……」
「……あと?」
「…………可愛く、喘ぎ声を出す方法とか……」
最後の方は、自分でも聞き取れないくらい、どんどん小さな声になってしまった。
「ああ、それで……」
硝子さんは短く息を吐いて、一人納得したように深く頷いた。