【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第7章 「背伸びの先にある恋**」
「――でさぁ、俺、マジで今の彼女と別れたいんだよね」
隣のテーブルから、男子大学生三人の笑い声混じりの会話が、不意に耳に飛び込んできた。
「は? お前、先月付き合ったばっかじゃん。なんで?」
「いや、顔はめっちゃ好みなんだけどさ……絶望的にキスが下手で萎えるんだよ」
「うわー、それキツイな」
ケーキに伸ばそうとしていたフォークが、ピタリと止まった。
「だろ? なんかこう、唇カチカチっていうか、反応薄くてマグロだし」
「あー、自分から動かないタイプ?」
「そうそう! やる気あんの?って感じ」
(……キスが下手で萎える。反応薄くてマグロ……)
マグロ、って何。
魚の?
いや、今の流れで魚の話はしないよね。
スマホを取り出して、意味を調べてみると、
“受け身で反応が薄い”
“動かない、相手任せ”
“ただ横になっているだけ”
(……え)
(マグロ……って、そういう……)
スクロールする指が止まる。
呆然とする私をよそに、隣の会話は続いていく。
「しかも、やってる時の声もなんか変で。全然可愛くないっていうか、変に力んでてマジで引く」
「それ最悪じゃん。男からしたら、声が変なのって一番萎えるよな」
「俺なら、勃たないわー」
カシャンッ!!
無意識のうちに持っていたスマホが床に落ちて、鋭い音を立てた。
ピタリと隣のテーブルの笑い声が止まる。
(あ……)
三人の男子大学生が、気まずそうな、あるいは変なものを見るような目でこちらを一斉に見ていた。
「……っ、すみません」
慌ててスマホを拾い上げ、頭を小さく下げる。
彼らは「なんだよ」「びっくりした」とヒソヒソ囁き合いながら、再び自分たちのテーブルへと向き直った。
私も誤魔化すように、ミルクティーのストローに手を伸ばす。
(もしかして、私も……先生に、そう思われてる?)
先生は、私よりずっと年上の大人だ。
私にはもったいないくらいかっこよくて、最強で。
当然、女性の扱いにも慣れている。
これまでにどんな経験をしてきたかなんて、怖くて聞けた試しがないけど。
そんな大人で余裕のある先生に比べて、私はどうだろう。