【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第6章 「しのぶ恋なれ、夏の宵**」
手際よく会計を済ませると、キーホルダーを私に手渡してくれた。
「はい、どーぞ」
「あ、ありがとうございます……!」
受け取ったキーホルダーを、両手でギュッと握りしめた。
(……先生からの、プレゼント)
今まで食事をご馳走になったり、京都の実家に連れて行ってもらったりはしたけれど。
こうやって「形に残るもの」をもらったのは、これが初めて。
(嬉しすぎる……)
このくまモン、一生大事にしよう。
どこに付けようかな。
いつも使ってるバッグか……
それとも、スマホにつけようかな。
そんな幸せな想像を膨らませていた、その時だった。
「あーーっ! いた!!」
背後から、甲高い声が飛んできた。
振り返ると、そこには昨日の女の人たちがこちらに駆け寄ってきていた。
「わ! やっぱ昨日のイケメンお兄さんだ!」
「私服も超カッコいいー!」
彼女たちは、私なんて眼中にないみたいに、先生を取り囲んで黄色い声を上げ始めた。
無意識のうちに、一歩、また一歩と後ずさっていた。
さっきまでの浮かれていた気持ちが、急速にしぼんでいく。
(……私、いない方がいいかな)
そんな考えが、勝手に浮かんでしまう。
そのとき。
「」
先生の声が、彼女たちの歓声を遮った。
視線だけで私を捉え、顎で外をしゃくる。
「タクシー来たから、先に荷物積んどいて」
「……え?」
「僕もすぐ行くから」
「あ、はい……」
頷いて荷物の持ち手を握ると、
女の人たちは、私にひらひらと手を振ってきた。
「妹ちゃん! バイバーイ!」
「お兄さんとお話あるから、タクシーで待っててねー」
悪気のない、弾んだ声。
でも、その視線はもう先生へと向いていた。
一応小さく頭を下げて、ロビーを後にする。
(……完全に、お邪魔虫だ……)
大人の邪魔にならないように、子どもは先に行ってなさいって。
そう言われているみたい。
先生は私をあの場から遠ざけるために、「先に行け」と指示してくれたのは、頭ではわかってる。
わかってるけど――。
「……はぁ」
旅行カバンを持ちながら、トボトボとタクシーへ向かった。