【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第6章 「しのぶ恋なれ、夏の宵**」
(……五分、だよね)
まだ半分も経っていないはず。
お湯から顔半分だけ出して、ガラス戸の方を窺った。
五分経ったら、ここに来るんだよね。
……裸の先生が。
私を簡単に隠しちゃうくらい、広い肩幅。
低い声が喉の奥で響くたびに動く、男の人特有の喉仏。
服を着てたらあんなにスラッとしてるのに、嘘みたいに分厚くて、硬い胸板。
……そして、その下の。
あの熱くて、何度も私の中をめちゃくちゃにする――
(っっっっっ!?)
(っ、ち、違っ……なに思い出してるの私……!)
慌てて両手で顔を覆った。
想像しただけで、またのぼせそうになる。
その時だった。
ガララッ――。
「はい、五分経ちましたー」
ガラス戸が勢いよく開いた。
そこには、もう浴衣を脱ぎ捨てて、タオル一枚腰に巻いただけの先生が立っていた。
「えっ!? まだ半分も経ってませんけどっ!?」
「僕の中では五分経った」
「そんなジャイアンみたいな理屈……っ!」
「だって待ちきれないし。……それに」
先生は悪戯っぽく笑いながら、テラスへ足を踏み出した。
「が恥ずかしがってると、興奮するんだよね」
「~~っ! この嘘つき! へんたい!」
「はいはい、なんとでも言って」
先生が岩風呂に近づいてくる。
私はお湯の中で膝を抱えて、これ以上ないくらい小さく縮こまった。
恐る恐る先生の方を見上げると――
蒼い瞳が、ぼうっと滲んだ湯気の向こうからまっすぐ私を捉えていて。
口元には、無邪気さと悪戯心をひとさじ混ぜたような笑み。
「……夜は、まだ長いよ? 」
低く甘い声が、夜の静けさをやぶって降ってくる。
抵抗も虚しく……
私の「五分の猶予」は、あっけなく消滅してしまったのだった。
――五条悟、やっぱり最強。
いろんな意味で。