【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第6章 「しのぶ恋なれ、夏の宵**」
下駄の音を荒く響かせながら、私は離れの部屋まで戻ってきた。
引き戸をガラリと開けて中に入り、すぐさま後ろ手でピシャリと閉める。
(……もう、知らない)
(先生も、あっちに行けばよかったのに)
あんなモデルみたいな人たちに誘われて、悪い気なんてしないはずだ。
私みたいな子供といるより、ずっと楽しいに決まってる。
いいこともあるっていってたし。
「……ふんだ」
押し入れから大きな座布団を引っ張り出して、バサリと畳に落とす。
私はそこに身を投げ出すように倒れ込み、顔を深く埋めた。
「もう寝る。ふて寝する」
誰にともなく宣言して、目を閉じる。
少しした後、引き戸がそっと開き、静かに閉まる音がした。
足音が近づいてきて、先生が部屋に入ってくる。
私はぎゅっと目を閉じて、寝たふりを決め込んだ。
「……ねえ、」
すぐそばから、呆れたような、
でも笑っているような声が落ちてくる。
「ほんとに寝ちゃうの? せっかくの温泉なのに?」
「……」
「ご飯もまだだよ? 懐石料理だってさ。馬刺しもでるよ」
「……いりません」
座布団に顔を埋めたまま、くぐもった声で返すのが精一杯だった。
顔を上げたら、絶対ばれる。
泣きそうな顔してるの、見られたくない。
「“妹”はお腹空いてないし、眠いので。先生はあの人たちの部屋に行って、いいことしてきたらどうですか」
――しまった。
自分で言って、すぐに後悔した。
これじゃ、嫉妬してますって言ってるようなものじゃん……!
案の定、頭の上から小さく笑う気配がした。