【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第6章 「しのぶ恋なれ、夏の宵**」
湯上がり処を出て、また竹林の廊下へ戻る。
さっきまでは“探検みたい”ってはしゃいでたのに、今はやけに長くて、暗く感じる。
(……妹、かぁ)
自分の下駄の音を聞きながら、足元を見つめた。
先生の隣に立つって、決めたはずだったのに。
周りから見れば、私はまだこんなにも子供で。
先生とは釣り合わない。
(先生も、なんで否定してくれなかったの……?)
って、言えるわけないか。
だって、私は“生徒”で、先生は“教師”。
みんなに堂々と言えるような関係じゃないもん。
彼女って言ってもらえたら嬉しいけど。
でも、そしたら“問題”になっちゃう。
言わないほうが、お互いのため……なんだろうなって。
わかってる。
そんなこと、わかってるけど――
なんだか悔しくて、情けなくて、恥ずかしかった。
温泉でぽかぽかしてた体が、急に冷えていく。
「?」
前を歩いてた先生が、振り返った。
「どうしたの? 急に黙って」
「……別に」
思わず、そっけない返事をしてしまう。
先生はきょとんとしたあと、私の顔を覗き込んできた。
「なんか怒ってる?」
「怒ってません。……“妹”はちょっと眠いので、先に部屋に戻ります」
それだけ言って、先生を追い越して早足で歩き出した。
後ろから、
「――あ、そゆこと?」
なぜか楽しげな声が聞こえたけど。
私は、振り返らなかった。