【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第6章 「しのぶ恋なれ、夏の宵**」
「お兄さん、一人? どこから来たの?」
「このあと、私たちの部屋で飲まない?」
そう言いながら、1人の女の人が浴衣を少し着崩した。
鎖骨がちらりと見えて、胸が見えちゃいそう。
……いや、見せてる!?
「離れの“椿”っていう部屋にいるんだけど……来てくれたら、いいことあるかもよ?」
(いいことって何!?)
先生は、一瞬女の人たちを見たけど、ふっと短く息を吐いた。
「僕、連れ待ってるから」
「えー、連れって? 友達? もしかして彼女?」
「遅いじゃん。放っておいて、私たちと遊ぼうよ~」
女の人が先生の腕を掴もうとした、そのとき――
ふと顔を上げた先生と、目が合った。
「あ、! こっちこっち~!」
先生は女の人たちのほうを見もしないで、私に向かって手を振った。
その一言で、女の人たちの動きが止まり、鋭い視線が一斉に私に向けられる。
(……なんか、見られてる)
彼女たちの目が頭から足の先まで、私をゆっくりなぞっていく。
でもすぐに、「敵意」が消えたのがわかった。
「あ、お兄さんの……妹さん?」
(……い、妹……?)
私は言葉を失って、立ち尽くすしかなかった。
「可愛い~! 高校生? あんまり似てないね」
「ごめんね~、お兄さんカッコいいから引き止めちゃった」
ニコニコ笑う彼女たちの声が、なぜかすごく遠く感じた。
彼女たちにとって、私は「女の人」という土俵にすら上がっていない。
ただの「可愛い妹」。
言いたい。
“妹なんかじゃなくて、先生の彼女なんです”って。
先生は「よいしょ」と言って立ち上がり、
「、ほら行くよ」
そう言って、私の背中に手をまわした。
女の人たちは、私たち……いや先生に向けて笑顔で手を振っている。
「お兄さーん、気が向いたら部屋来てね〜!」
「妹ちゃんもまたね〜」
先生は特に反応することなく、歩き出した。
私は引きつった愛想笑いを浮かべて、先生の後をついていくのが精一杯だった。