【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第6章 「しのぶ恋なれ、夏の宵**」
「あはは。、真面目すぎ」
「笑わないでくださいよ……!」
「泳がなきゃ大丈夫だよ」
「お、泳ぎませんよっ!」
先生は少し考えて、人差し指を立てながら言った。
「“かけ湯してから入る”、“体は先に洗う”、“タオルはお湯につけない”。それさえ守ってれば問題なし」
「あとは……服とか荷物は、脱衣所にある籠とかロッカーに入れて。貴重品用の鍵付きロッカーもあると思うよ」
そう言って、先生はポンと私の頭に手を乗せた。
「大丈夫。変なことしたら、あとで僕が笑ってあげるから」
「……っ、それ絶対バカにするやつじゃないですか」
「ま、細かいことは気にせず、リラックスしておいで」
先生にそう言われたら、急に気が楽になる。
「じゃ、行こ」
先生が手を差し出してくる。
私は、自然にその手に自分の手を重ねた。
部屋を出て、竹林の中に続く長い廊下を歩く。
行灯の明かりが、優しく足元を照らしている。
「なんか、探検みたいですね」
「迷子にならないでよ? 広いからさ」
「なりませんよっ……!」
思わず言い返すと、先生がくすっと笑って、私の手をぎゅっと握り直してくる。
ちらりと先生の横顔を見ると、目元がほんの少し緩んでいた。
いつもより表情が柔らかい気がする。
サングラスを外してるからかな……
今は特級呪術師というよりは、かっこいい男の人って感じで。
(先生だけど……わたしの彼氏、なんだよね……)
いまさらなのに、その実感が湧いてきて。
なんかちょっと照れくさい。
(こうやって手を繋いで歩くの、デートみたい)
……いや、デートなんだけど。
でも、先生とこんな風に穏やかな時間が過ごせるなんて。
嬉しくて、私もぎゅっと力を込めて手を握り返した。
やがて、廊下の先に『男湯』『女湯』の暖簾が見えてきた。
「じゃ、またあとでね。一時間後くらいに、湯上がり処で」
「はい」
先生はひらひら手を振って、男湯のほうへ入っていった。
その背中を見送って、私も女湯へ向かう。
脱衣所に入ると、湯けむりと木の香りがふわっと包み込んできた。
広々とした脱衣所には、竹で編まれた脱衣籠が整然と並んでいる。