【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第6章 「しのぶ恋なれ、夏の宵**」
案内された客室は、思わず息を呑むくらい広かった。
天井が高くて、太い梁が通ってて、床は黒くて艶のある板張り。
テーブルの上には、氷が浮かんだ冷たいお抹茶と、涼しげな水菓子が用意されていた。
(先生の実家もすごかったけど……ここもすごい)
ガラス戸の向こうに、湯けむりが見えた気がして、そっと近づいてみる。
「……わぁ……」
思わず声が漏れた。
部屋の外に広がっていたのは、信じられないくらい大きな岩風呂だった。
岩の間から、白い湯気をまとったお湯がこんこんと湧いている。
そんなお風呂が、自分の部屋についているなんて。
テラスに出ると、ふわっと硫黄の香りが鼻先をかすめた。
それだけで、張り詰めていた神経がほどけていくような気がする。
「先生、露天風呂あります!」
興奮して振り返ると、すぐ後ろに先生がいた。
先生はガラス戸の枠に片手をついて、私と岩風呂を見下ろしている。
「ふふ、これなら、いつでも好きなときに入れますね……!」
私がそう言うと、先生はふっと口元を緩めた。
「そうだね。ま、部屋のお風呂は『あと』のお楽しみってことで」
「……?」
言い方がちょっと引っかかるけど、まぁいっか。
とにかく、すごいとこに来ちゃったな……。
「まずは大浴場に行こっか。ここ、露天風呂が有名らしいよ。僕も入りたかったんだよね~」
先生が立ち上がって、浴衣とタオルを手に取った。
私も同じように荷物を抱えながら、こっそり気になってたことを打ち明けた。
「……あの、先生」
「ん?」
「私……こういう大きなお風呂って、あんまり来たことがなくて」
「家族で来たりしなかった?」
「行ったことはあるんですけど、小さい頃だったから、あんまり覚えてなくて……」
(……っていうか、たぶんスーパー銭湯だったし……)
「その、入り方とか……マナーとか。なんか間違えたらどうしようって……」
こんな高級旅館、絶対マナーとか厳しそう。
やらかしたら、死ぬほど恥ずかしい。
先生は一瞬きょとんとしたが、すぐに吹き出した。