【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第5章 「2025誕生日記念短編 魔女は蒼に恋を包む」
「へ、婚約者……?」
「そしたら、そのあと聞いてもないのに“彼、農業に情熱があって…”とか、“実家もすごく優しくしてくれて…”とか……」
先生は片手をひらひら振りながら、心底うんざりしたように続けた。
「もう、途中から惚気タイム。ほんとやんなっちゃうよ」
私はそれを聞いて、力が抜けた。
全身から、変な緊張がふわっと抜けていく。
(え、じゃぁ……)
(顔を赤くしてたのは、先生じゃなくて……婚約者さんに対して……?)
(……全部、勘違いだった……)
先生はそんな私を見ながら、わざとらしく肩を落とした。
「僕、そんな信用ない?」
「……っ! ご、ごめんなさい……!」
「その……あの……わたし……先生が告白されてるのかもって……っ」
しどろもどろになりながら口にした瞬間、
先生は、これ見よがしに深く深くため息をついた。
「……告白されても断るに決まってるでしょ。僕にはがいるんだから」
そう言うと、なぜか部屋の隅に歩いていき、壁に向かって体育座りをした。
そして、膝を抱えたまま、指先で床に「の」の字まで描きはじめた。
「せ、先生、何を……?」
「あ〜……傷ついたなぁ……」
「呪力も出ない……明日の任務も無理だなぁ……」
「もう……ずっとここにいる……」
「あ、あの……」
声をかけても、先生は膝に顔を埋めたまま小さくブツブツ言っている。
(なんか、面倒くさいモード入っちゃった……!!)
慌てて先生に近寄り、その隣に座った。
「せ、先生……っ、その……わ、わたしが悪かったです……!」
「これからもう一つケーキ買ってきましょうか!? 今からでも間に合うお店あると思うし……!」
「…………やだ。が作ったやつじゃないと意味ない」
「きょ、今日はもう材料がないので無理ですけど……明日なら……」
「…………明日じゃ遅い。僕、誕生日“今日”なんだけど?」
「じゃ、じゃあっ……明日の任務……わたし、できること全部手伝います!」
「…………特級案件だけど?」
「……う、それは」
先生はさらに「の」の字を高速で描き始めてしまった。
「僕、傷ついて呪力ゼロ~。戦えな~い。困ったな~」
「これ、完全にの責任だよねぇ?」