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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第5章 「2025誕生日記念短編 魔女は蒼に恋を包む」


「……ケーキ……失敗して……」



そう言った途端、空気がぴたりと止まった。
沈黙。
たった数秒なのに、ものすごく長く感じる。



「――は?」

 

先生の声が、ぐっと低くなった。
思わず身体が強ばった。
呪力が見えない私でも、はっきりわかる。
すごいことになっていると。



隣の部屋から、野薔薇ちゃんの叫び声が聞こえた。



「ちょっと! 何!? 何が起こってるのよ!?」

「五条センセーっ!? 呪霊!? 呪霊でも出たの!?」



男子寮の方からも、虎杖くんが慌てている声がする。


(え、まって、え、やばいやばいやばい……!)
 

今、先生の呪力がどれだけ跳ね上がってるのかわからない。
でも、周囲がここまで騒ぐってことは……相当なんだろう。


慌てて先生から離れようとするが、
その腕はがっちり私を抱きしめたまま、一ミリも緩まない。


(……これ、めちゃくちゃ怒ってる……)

(たすけてぇ、野薔薇ちゃん……!)


外が騒がしくなっているのに、室内は地獄みたいな静けさだ。
早く、謝らなきゃ――


先生は深く、ため息をつきながら、





「……そんな理由で、ドタキャンしたってこと?」



呆れた声が落ちてきた。


 
“そんな理由”



たしかに、そうだけど。


でも。


(こっちは、ちゃんとお祝いしたくて……)

(先生に喜んでほしくて、何日も前から、何回も練習して……)

(プレゼントも、何度もお店行って、ぐるぐる迷って……) 

(なのに……あんなの見たら、自信なんて残らないよ)


談話室で見た、山みたいな高価なプレゼント。
補助監督さんのプレゼントを受け取った先生の笑顔。


どれも自分よりずっと大人で、素敵で。
“先生にふさわしい”ものばかりで。
自分とは遠い世界みたいで。


(……比べちゃったんだよ……)


ケーキもうまく焼けない。
ブランド物だって買えない。
さらっと気の利いたものを渡せない。


そんな大人の人ができることを、わたしはまだできない。
“私じゃ釣り合わないんじゃないか”って、どうしようもなく思ってしまった。


言いたくなかったことが、もう抑えられない。






「そんな理由ですけどっ……!」



言葉が爆発した。
堰を切ったみたいに、溢れた。
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