【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第5章 「2025誕生日記念短編 魔女は蒼に恋を包む」
誕生日当日の朝。
教室への廊下を歩きながら、今日の予定を振り返る。
(先生、夜に戻ってくるって言ってたから……)
授業が終わったら、すぐ寮のキッチンを借りてケーキを作ろう。
この日のために、レシピも材料も、練習だって何度も重ねた。
きっと、きっと大丈夫。
カバンの中に手を入れて、あの箱を確かめる。
青いリボンに包まれた、小さなプレゼント。
(プレゼントも、よし!)
実は一ヶ月前に、こっそり買いに行った。
ぐるぐる悩んで、迷って、何度も手に取っては戻して……
ようやく選んだのは――
“先生の瞳”と同じ透けるような青の軸に、銀のリングが光る老舗文具ブランドのボールペン。
名前の刻印も小さく入れてもらった。
(気に入ってくれるかな……)
頭に浮かぶのは、報告書を手渡したあの日のこと。
「ペン貸して~」って、伊地知さんの胸ポケットから、当然のようにボールペンを借りて――
しかも返さないままどこかへ行っちゃう先生。
その度に、伊地知さんがペンを発注してた……
(だから……先生専用のちゃんとしたやつ、あったら便利かなって)
本当は、欲しいものなんて直接聞けば早かったのかもしれない。
でも、それじゃサプライズにならないし……
それに……もし、めちゃくちゃ高価なものを望まれても、私には買えないし。
だけど、どうしても何か贈りたくて。
“先生の彼女”として、ちゃんと。
『じゃあ、夜楽しみにしてるね』
昨日の電話の声を何度も思い出すたび、顔がゆるむ。
(ケーキも、うまく焼けますように)
(プレゼント、先生に喜んでもらえますように……!)