【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第5章 「2025誕生日記念短編 魔女は蒼に恋を包む」
『さすが、僕の彼女だね~』
(……送って、よかった……!)
つい顔がニヤける。
彼女らしいことができて嬉しい。
電話越しでよかった。
今の顔見られたら絶対からかわれるもん。
(勇気出して、あれ言ってみようかな……)
スマホを持つ手に力が入る。
「……あの、その……えっと……今日、なんですけど……」
『うん?』
「もし……時間が空いてたら……すこしだけ、お誕生日のお祝いしたいなって……」
電話の向こうで、わずかに沈黙が流れる。
(さすがに迷惑だったかも……)
スマホを握る手がじんわり汗ばんでくる。
耳にあてた端末の向こうが静かなほど、自分の鼓動の音ばかりが大きく感じた。
「あ……やっぱり忙しいですよね……?」
『いや、ちょっと待ってて』
返事と同時に、先生が誰かに話しかける声が聞こえた。
『伊地知~?』
遠くで伊地知さんの返事が聞こえた。
『今日の夜の予定、全部パス!』
『えっ、五条さん、そんな急に――!』
伊地知さんの悲鳴がはっきり聞こえた。
『“僕の誕生日”は、国が保護すべき文化遺産だよ?』
「聞いたことありませんけど……」
『じゃあ今日から登録ってことで』
「五条さん!?」
先生、また伊地知さんに無茶振りしてる……。
でも、今日だけは――
1時間でも、30分でもいい。
伊地知さんには悪いけど、先生の時間をあけてほしい。
(伊地知さん……今日だけは、ごめんなさい……)
先生は何事もなかったように電話に戻ってきた。
「じゃあ、夜楽しみにしてるね」
「は、はい!」
通話が切れたあとも、しばらく私は布団の上で固まったままだった。
(どうしよう……嬉しすぎて、眠れない……)
スマホを胸に抱え、目を閉じる。
先生の誕生日。
(……先生が、喜んでくれたら……)
少しでもそう思ってくれたらいいな、なんて。
(今日は、絶対、先生を笑顔にしたい)
良い誕生日になりますように。
そう願いながら、私はそっとまぶたを閉じた。