【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第4章 「咲きて散る、時の花 後編**」
***
蝉の声が遠のいて、夕暮れの風が頬を撫でる。
まだ蒸し暑さは残っているけど、どこか夏の終わりの気配も漂っている。
任務帰りの帰路。
私と先生は並んで歩いていた。
「今日はこの前みたいな結界にうっかり入ることもなかったし、上出来じゃない?」
揶揄うような調子で言われて、私は思わずうつむいた。
「……それは言わないでください」
情けないやら恥ずかしいやらで、声が小さくなる。
「でも、あの時……結界に入ってからの記憶、実は全然ないんですよね」
自分でもそう言葉にしてから、ふと不安になる。
記憶が抜け落ちてることに、どこか現実感がないままだ。
「目が覚めたら、虎杖くんがいて。私倒れてたって言われて……」
「気絶してたのかな、やっぱり……」
そう漏らした私の言葉に、先生は「ふーん」と気の抜けた声を出した。
それから、ちらりと横目で私を見た。
「ま、無事でよかったよ」
そう言って、また前を向いて歩き出す。
そのとき――
「見て。クレープのキッチンカー来てる」
見れば、坂を下りた先の公園の一角に、小さなキッチンカーが停まっている。
パラソルの下で、制服姿の学生や子供たちが楽しそうに並んでいた。
「寄ってこ」
「えっ、いいんですか」
「もちろん。任務後のご褒美は大事でしょ?」
軽く手招きしながら先を行く先生の背中を、少し遅れてその後を歩き出す。
「そこのベンチ座っててよ。僕、買ってくるから」
そう言って、先生は片手をひらひらと振りながら、キッチンカーの方へと歩いていった。