【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第4章 「咲きて散る、時の花 後編**」
「そいつを連れてきて、俺たち三人の記憶からの記憶を消す。それでは元に戻れる」
五条さんの言葉に、部屋が静かになった。
場にいた全員が、それが“正しい選択”であることを理解したのだろう。
夏油さんがふっと息をついた。
その横顔には、どこか寂しげな微笑みが浮かんでいた。
「せっかくちゃんと知り合えたのに、寂しいけど仕方ないね」
その言葉を口にしたあと、夏油さんは五条さんの方に視線を向けた。
「悟はそれでいいのかい?」
五条さんは、返事をしなかった。
ただ、口を真一文字に結んだまま、視線を床に落とした。
「……嫌に決まってんだろ」
そこには軽口も、冗談もなかった。
「けど……十一年後に俺はに出会えて、また好きになる」
その言葉に、私ははっと顔を上げた。
五条さんは真っ直ぐにこちらを見ている。
「その未来が変わったら困るからな。 ま、十一年なんてすぐだろ」
そう言って、笑ってみせた。
でも、その目は少しだけ揺れている気がした。
硝子さんはガラケーを取り出して、ぱちぱちとキーを打ち始めた。
その横で、夏油さんが穏やかな声で言った。
「ちゃん、今日はもう高専に泊まっていきなよ。外も暗いし、術師も今日来れるか分からないしね」
「……そんな、何から何まですみません!」
私は慌てて頭を下げたけれど、夏油さんはにこりと笑って首を振る。
「大丈夫。女子寮に空いてる部屋あると思うから」
「えー、じゃあ俺の部屋で……いいじゃん」
「悟はバカなのかい?」
ピシャリとした声が即座に飛ぶ。
「女の子を男の部屋に泊めさせるわけにはいかないだろ」
「やましいことなんて考えてねーよ!」
(いやいやいや、さっきエッチしたいって言ってた人が何を……)
ぱたん、と音を立てて硝子さんがガラケーを閉じた。
「下心、見えすぎ。キモい」
「硝子! 今日、俺に冷たくない?」
硝子さんはやれやれと肩をすくめながら、私に笑いかけた。
「行こ、ちゃん。女子寮、案内するよ」
「あ、はい……!」
私は慌てて立ち上がり、その場を後にした。