【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第4章 「咲きて散る、時の花 後編**」
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空が暗くなり出した頃。
高専の談話室には、なんとも言えない空気が流れていた。
「……え? もう一回言ってくれる?」
開口一番、硝子さんが眉をひくつかせながら訊いてきた。
その隣では、夏油さんが腕を組み、やれやれといった顔でため息をつく。
「だーかーらー!」
五条さんがソファの背もたれに肘をかけ、少しイラついたように言った。
「俺がを好きになっちゃって、それで未来が変わってが戻れなくなったってこと!」
「…………」
その場の空気が、数秒止まる。
「……五条」
硝子さんが、じっと五条さんを見つめたまま言った。
「……あんたが“誰かを好きになった”ってところが一番信じられない」
「は!? なんでそこなんだよ!」
隣の夏油さんも、呆れたように肩をすくめた。
「悟が恋するとか……ブラックホールから桜が咲く方がまだ現実味あるね」
「いや、どういう物理現象だよ!?」
二人のツッコミに、五条さんがむくれたように唇を尖らせた。
「お前ら、俺のことなんだと思ってんの?」
「「恋愛偏差値マイナス100の男」」
「うぐっ!」
三人の会話が盛大に脱線する中、私は小さく息をついた。
(五条さんが誰かを好きになるって、そんなに信じてもらえないんだ……)
あの後、私たちは高専へ戻り、状況を夏油さんと硝子さんに説明している最中だった。
先生はさすがに姿を見せられないため、今は五条さんの部屋に隠れてもらっている。
「……あの、だから、その」
私は少し前に出て、二人の視線を受け止めた。
「17歳の五条さんが、誰かを好きになるという過去は、本来はなかったことで。でも今回、それが変わってしまったんです」
「だから、“私”の存在がこの時代の記憶に刻まれ続ける限り……私は未来に戻れなくて」
自分の言葉を確かめるように、ゆっくり言葉を重ねる。
「つまり、それが“縛り”の解除条件ってわけだね」
夏油さんが顎に手を当てる。
五条さんが勢いよく指を鳴らした。
「“記憶を消す術師”いただろ? 硝子、前に任務で会ったことあるって言ってたじゃん」
「……いたけど」
硝子さんが思い出すように眉間に皺を寄せる。