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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」



(……そうだろ、)


お前はその覚悟を持って、ここに来た。
そう割り切れなきゃ、二人とも死ぬだけだ。
 

拳に呪力が集まる。
青白い光が、肌を這う。
集中する。正確に。確実に。

 
殺すなら、一撃で。

 

けれど。

 
(……それで、いいのか?)

 
ほんのわずかに、呼吸が乱れた。
その刹那。

 

「――っ!」

 

時屍獣の肢体が跳ねた。
まるで一瞬の迷いを読んだかのように、背中の無数の腕が蠢く。
殺意を帯びた影の槍が、一直線に俺の頭部を貫こうと迫る。

 
だが、無下限術式により槍の先端は顔の手前で静止する。
次の一撃も、また次の一撃も同じ。

 
(なんで、俺は迷ってんだよ)

 
こんな状況、腐るほどあっただろ。
味方がやられ、助けられず見殺しにする。
それでも任務を遂行する。
それが“術師”ってやつだろうが。

 
(見捨てればいいだろ、を――)


再び振るわれる、黒い腕の連撃。
それを受け流しながら、ぐっと奥歯を噛んだ。

 

「……くそっ」

 

俺は吐き捨てるように呟き、地を蹴った。
の身体に干渉しないギリギリのラインを狙う。


拳に呪力を集中。
余計なものは殺して、ピンポイントで叩く。
空間が裂け、黒い肉が跳ねた。
泥がえぐれ、腕の何本かが吹き飛ぶ。

 

「おい、っ!」

 

叫んだ。
声が震えるとか、どうでもよかった。

 

「起きろ!! お前、こんなとこでくたばんのかよ!!」

 

反応はない。
でも、関係ない。
届くまで何度でも名前を呼んだ。

 

「聞こえてんだろ!? お前の力……見せてみろよ!!」

 

ふざけんな。
俺は……俺は……



なんで……お前一人だけ、見捨てられないんだよ。
 


「、戻ってこい!」

 

声が少しだけ掠れた。
それでも俺は拳を引いたまま、あいつの名前を呼び続けた。


拳を引いた瞬間、視界の隅で何かが光った。
時屍獣の泥の中に、あの“白い花”が再び咲いた気がした。
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