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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」


無力だ。
でも、それでも。
このまま見ているだけなんて、絶対にいやだった。


(わたしにできること……何か、ひとつでもあるはず)

(攻撃を受けても、すぐに“時間を巻き戻す”なら……)


ならば。
もし、あいつの莫大な“呪力”を一気に削ることができれば……
きっと、術式を発動できなくなる。


(……だったら)


私は自分の呪具――小太刀をぎゅっと握りしめた。

 

(“送る”んだ……あいつの中に渦巻く、呪力の源……)

(――後悔の声を)

 
ふと、風が揺れた気がした。

 
私は一歩、前へ出る。
時屍獣の背中に広がる無数の影――
その中で、かすかに響いていた。

 

「……ごォォ……めンねェ……」
「……いカなイでェ……」
「……もっト、ハヤク……きづイて……いれバァ……」
 


それは時屍獣が喰った、人間の抱えきれなかった“後悔”の残響――


息を深く吸い込む。
心の中心に、あの“白い花”が小さく灯る気配があった。
それは誰にも気づかれぬほど静かで、儚くて、それでいて――
確かな力だった。

 
(いま、送る……!)

 
だが――

 

「――ッ!」

 

空気が揺れた。
背筋に冷たい悪寒が走る。
 

(……え?)
 

視界が揺れる前に、気配が背後を覆った。
振り返るより早く、闇が私を呑み込もうと迫ってきた。

 

「っ!!」

 

五条さんの声が響いた。
けれど――

 
時屍獣の顔がすぐそこにあった。


 
『……おまエ……』

 

歪んだ骸が、にやりと口の端を吊り上げた。
その奥――歯車がカチリと音を立てる。

 

『……おもシロイ……力ダ……』

 

背後から伸びた影の腕が私の首筋に触れた。
びくん、と身体が跳ねる。
それはまるで冷えきった泥のように、生々しく、粘り気を持って肌を這った。
触れられた箇所から、冷たさが骨へ、脊髄へ、内側へと這い込んでくる。

 

「あ……っ」

 

逃げようとした。
けれど、足が動かない。
まるで意識が靄に包まれていく。

 
(……何、これ……頭が……)

 
次の瞬間、目の前が崩れた。
空間が音を立てて裂ける。
五条さんの声も、視界も、全てが遠ざかる――

 

『喰ラワセロ……オマエノ、“花”ヲ……』

 

その声と共に、私は影に呑まれた。
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