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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」


時屍獣の体がぐらついた。
腕の付け根が裂け、灰色の液体がこぼれ落ちる。
いくつかの部位が崩れかけており、動きも鈍くなっていた。



「お前の時間は、もう戻させねえよ」

 

冷たい声が、静かにとどめを刺すように響いた。
私はただ、その光景を呆然と見つめていた。

 
(……これが、“現代最強呪術師”)

 
身体の奥で、何かが震えていた。
恐怖でも畏れでもない。
ただ、圧倒的な存在に触れたときの息を呑むような衝撃。


五条さんは倒れかけた時屍獣へと歩み寄っていく。
だが、その足がふいに止まった。

 

「……っ、またかよ」



その声と共に、空間がぐにゃりと歪んだ。
崩れたはずの体が、まるで巻き戻すように再生されていく。
えぐれた胸元が閉じ、失われた腕が再び形成され、歯車の目がカチリと逆回転する音が響いた。

 

「チッ……これじゃキリがねぇ」



五条さんが舌打ちし、眉間に深い皺を寄せる。

 

「どんだけ呪力溜め込んでんだよ……」

「まぁ、人間の後悔ほど無限にあるものはねーからな……」

 

その声には、呆れと警戒の両方が混じっていた。


私は少し離れた場所から、それを見つめていた。


(……攻撃を受けるたびに、時屍獣は“時間を巻き戻して”再生する)

 
どれだけのダメージを受けても、すべてがなかったことになる。
 

(でも……こっちは違う)


攻撃を加えるたびに、確実に呪力は消費されていく。
もちろん、五条さんの呪力も桁違いだ。
けれど、それでも――
際限なく巻き戻される相手を前にしては、この戦いは終わらない。 
このままじゃ、持久戦になったらこちらの不利だ。


(……この戦いに、私ができることなんて)

 
呪力も、術式も、圧倒的な力もない。
あるのは――


(この悠蓮の力……花冠の魔導だけ)


怒りや恐怖、悲しみで苦しむ魂を解放する――“送り出す”力。
まだ、あの時の一度しか成功していない。
それに、こんな特級呪霊に果たして届くのか。


時屍獣がねじれた肢体を猛スピードで蠢かせる。
背中の腕の影が複雑に絡み合い、槍のような先端が一斉に五条さんに襲いかかる。
それを、彼は寸分の狂いもなく避けた。


私は唇を噛みしめた。


(……こんな相手を前にして、私は――)
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