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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」


背中には、腕のような影がいくつも揺らめいていた。



「返セ……」
「……やリ直シタイ……」
「アノ時ニ……モドシテ……ェ……」

 

その背中から、低く濁った声が幾重にも折り重なる。
人間ともつかぬその“呻き”は、まるで過去に囚われた亡者たちの合唱だった。

 

「……っ」

 

思わず両手で耳を塞いだ。
だが、その声は脳髄に直接染み込むように這い寄ってくる。

 
闇の中のそれが、ゆっくりと顔をこちらに向けた。



「――時屍獣(じしじゅう)」

 

五条さんがそれをそう呼んだ。

 

「人間の後悔ばかりを喰い続けて……時間そのものを歪めてできた“屍”。こいつが、この結界の元凶だ」

 

そう言ったあと、五条さんは少し顎を上げて、わざとらしく息をつく。

 

「まさか、お目にかかれるとはな――」

 

その声音には、わずかな驚きとどこか愉しげな色が滲んでいた。

 

「……知ってるんですか?」

 

私がそう問うと、彼は一瞬だけ視線を寄越してきた。

 

「超レアな特級呪霊だよ。記録上でも観測されてるのは数回だけ。普段は時空の歪みに潜ってるからな」

 

にやりと、唇の端をつり上げて笑う。

 

「傑も呼んで、取り込ませたかったぜ……」



そう呟いた五条さんが、ゆっくりと手を伸ばす。
サングラスに指をかけ、それを外した。


露わになったその目は、透き通るような蒼。
冷たく、深く、そして――美しいほどに研ぎ澄まされていた。

 
 
「終わりの時間だ」

 

低く、地を這うような声。

 

「時間(とき)ごと、祓ってやるよ」

 

白い髪が風に流れ、その六眼が真正面から“時屍獣”を射抜いていた。
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