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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」


「、こっちに来い!」



突然、手首を掴まれた。
驚く暇もなく、私は五条さんの胸元に引き寄せられる。


その直後、ティラノサウルスが咆哮した。
巨体を揺らし、突進してくる。



「っ……!」



目を瞑りそうになる私の前で、ティラノサウルスの動きが止まる。
数十センチという距離で、まるで見えない壁に阻まれたように。



「……ったく。本物か、これ?」



低く落ち着いた声が、すぐ耳元で響いた。
五条さんの術式のおかげで、ティラノサウルスは動きを封じられている。


(た、助かった……)


なんとか危機を逃れ、ホッとする。



「……五条さん、ありがとうございます……っ」


 
震える声でそう言った。
息がまだうまく整わない。
心臓が暴れるみたいに速く脈打っている。


五条さんは短く「ああ」とだけ返した。
その声が思いのほか近くて――私はようやく気づいた。
五条さんの手が、まだ私の背中に回されたままだということに。
……その掌が、思っていたよりずっと熱い。


ドクン、と心臓が跳ねた。


五条さんの匂いがした。
さっきまでの埃くさい空気とは違う、少し甘くて涼やかな香り。
その中に、戦闘前の緊張と熱がじんわりと滲んでいた。


見上げると、五条さんの横顔がすぐそこにあった。
サングラスの奥の睫毛の一本一本まで、はっきりと見える距離。
喉仏が上下し、顎にうっすら浮かぶ汗が首元の光と混ざる。


そのとき――
彼の視線が、ふとこちらに落ちた。

 
(……!)


目が合った。
ほんの数秒だったはずなのに。
時間が止まったみたいに、互いに何も言えなかった。

 
「……」


ほんの一瞬だけ、五条さんの表情がわずかに揺れた気がした。
どこか、戸惑っているような、そんな目で私を見ていた。
その横顔には、ほんのりと赤みが差している。


ただ、静かに。
お互いの体温だけが、鼓動と一緒に伝わっていた。

 
……こんな状況なのに。
さっきまで、気まずい仲だったのに。
なんで、こんなにも胸が苦しいんだろう。
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