第5章 それは瞬く星のように
「剛翼をどげんすると?」
「ホークスに渡します。敵と戦う彼に必要なものなので」
ざわめきが大きくなり、空気が変わったの肌で感じる。
そして火を焚きつけたようにもう1人の男が声を上げた。
「それは人殺しのホークスに手を貸せってことか!?」
「冗談じゃなか」
「俺達が避難しなくちゃならなくなったのもお前達公安やヒーローのせいだろうが!」
「なんで私達がそんなことしなくちゃいけないのよ」
人々の怒りの感情が瞬く間に燃え広がっていく。
怖い
辛い
恐ろしい
苦しい
しんどい
剥き出しの怒りの矛先を向けられ、白失は竦み上がった。
―泥棒敵の子供!―
―許可なく他人に個性を使うのは犯罪だ。お前は立派な犯罪者なんだよ―
頭の中でかつて言われた鋭い言葉の数々がこだまする。
悪寒がする。頭が痛い。
背中を嫌な汗が流れ、呼吸ができなくなっていく。
今すぐここから逃げたい
今すぐどこかに隠れたい
今すぐ 消えたい
ここにいる全員の記憶から私の存在を消したい。
今までずっとそうしてきた。
そうすれば罵声はなくなる。
怒りを向けられることはなくなる。
拒絶されることもなくなる。
全部全部、無かったことになる。