第13章 ・探究
ロキは高層ビルが立ち並ぶ空を見上げた。
狭い青空に、小さな雀の群れが楽しそうに飛んで行く。
「……Brother、お前はLucky Boyかも知れねえなあ。一目惚れしたギタリストのギターに、すぐ会えるなんてよ……しかも、もう生産されてねえシロモノだ。運命の出会いか……お前はギターにもモテるのかよ」
「……モテてるのは、あのギタリストとこのギターだろ。おれじゃねえよ」
ゾロが苦笑いを浮かべたその時、彼等を呼ぶ声が耳に届いた。
「……ゾロさん、ロキさん!」
振り返ると、少し先に青い髪の女の子が立っていた。
昨夜行った高級キャバレークラブで、接客に付いていた子だ。
カジュアルな装いで、緩く束ねた青髪が光を受けつつ揺れている。
少し照れた様な表情を浮かべ、しかし、その瞳は明るく輝いていた。
ゾロは右手を軽く上げる。
「おう、昨日は世話になったな」
「いいえ、私の方こそ、お話を聞いてくれて……本当にありがとうございました」
ロキが透かさず、ニヤニヤしながら口を挟む。
「今日は一段と可愛いね。これから何処に行くんだい?」
「もう、ロキさんったら。そんな事言っても何も出ませんよ」
軽く笑った後、少し恥ずかしそうに続けた。
「私……暫く大学、休んでたんですけど……また通う事にしたんです」
ゾロは短く頷き、左手のギターケースを右手の指先で軽く叩いた。
「そうか……おれも、これをちょっと始める事にしてよ」
「えっ、もしかして……楽器?ギター、ですか?」
「ああ。ちょっとな、あるギタリストにやられてよ……あんな風に弾けたらいいなって、思ってな」
彼女は目を見開き、そして微笑んだ。
「何だか……凄く似合います。ゾロさんなら、きっと弾けますよ」
「……まあ、似合うかどうかは、判んねえけどな」
ゾロは少し照れた様に微笑んだ。
彼女は一呼吸置いて、真っ直ぐにゾロを見る。
「私も……もう一度挑戦しようと思って。昔、諦めた夢……ゾロさんのお陰で、またやってみようって思えたんです。本当に、ありがとうございます」
「……そうか。なら、良かった……絶対、諦めんなよ」
ゾロがそう言って歩き出す。
その背中に、明るい声が届いた。
「はいっ!ゾロさんも、ギター頑張って下さいね!!」
彼は右手を軽く上げて返した。