第12章 ・克己(注…R18)
寸前で止められたゾロの腰が、思わずビクン、と跳ね上がる。
目を閉じ苦悶する彼を見詰めながら、彼女はゾロの頬に手を当てる。
「ああ……貴方、本当に素敵……」
淫魔の本能に火が付く。
微笑みつつ、自ら服とショートパンツをゆっくりと脱ぎ捨てた。
サテン生地の黒いTバックが、鈍い光を放っている。
「……まだ、イッちゃダメ……もっと、気持ち良くシて、体も心も狂わせてあげる……」
焦らす様に甘い言葉を吐きながら、ゾロの逞しい体に身を滑らせた。
その瞬間、リリムは目を見開いた。
肌が触れ合った箇所から、爆発的な『熱』が流れ込んで来たのだ。
それは淫魔がこれ迄に虜にして来た、どんな男の熱情とも違っていた。
(……な、何?この熱……! 触れてるだけで、私が溶かされそう……!)
地下に眠る熱いマグマに触れている様な感覚。
ゾロの肉体は快楽に溺れるどころか、周囲を焼き尽くさんばかりに力強く脈打っていた。
リリムは恐る恐る、荒い息を繰り返すゾロの顔を覗き込んだ。
男は、ゆっくりと目を開ける。
その瞳は、情欲に浸る男の瞳ではなかった。
薄暗い部屋の中で、獣の如く鋭い光を放っている。
そして……ニヤリと笑った。
リリムはそんな彼に引き込まれる様に、唇を重ねた。
互いに舌を絡め、強く抱き合う。
彼女は彼の右手を掴むと、自分の胸に導いて行った。
舌を絡めつつ、彼女の小さく柔らかな胸を、ゾロは壊れない様に優しく揉みしだく。
指先で小さな突起に刺激を与えてやると、彼女は堪らず舌を外し、声を上げ体を震わせた。
ゾロが、口端を上げる。
「……ずっと『ご無沙汰』だったんだろ? お前の『心』が……そう言ってるぜ」
低く、ドスの効いた声。
リリムは快感に身を震わせつつ、思わず息を飲む。
男は至極の快楽に身を委ねながら、淫魔の『内面』を冷静に観察し続けていたのだ。
「……ずっと欲しくて……飢えてたんだろ……」
ゾロに彼女の思念が届く。
彼に似た男の影が一瞬濃くなり、そして消えて行く。
リリムは哀しげな声で、呟いた。
「……代わりにしようとしてた。でも……もう、違う。今触れているのは、その人じゃない……貴方よ」
彼女の絞り出す様な告白が、静まり返った部屋に響く。
「貴方の全てが……欲しい……」