第12章 ・克己(注…R18)
一度吐き出しただけでは収まらない、次々と湧き上がる情欲。
罪悪感との板挟みになり、悶えながら、一週間も修業に身が入らなかった。
己の弱さを痛感した彼は、それ以来心に決め、肝に命じたのだ。
『快楽に、心を奪われるな』
……と。
だが今、目にしたのは雑誌ではなく、映像だ。
目と耳が刺激され、妙な記憶が頭に残る。
彼はまだ二十一……普通の若者であればその映像に魅入り、独り淫靡な行為に耽るのだろう。
だが……ゾロは一つ大きく息を吐くと、邪念を振り払う様にソファーから立ち上がった。
(……まだまだ、修業が足りねえ……)
Tシャツを脱ぎ、両手で頬をビシビシと叩き、気合を入れる。
そして床に片手を突き、腕立て伏せを始めた。
右腕で百、左腕で百……汗が床に落ちる。
その時、テレビから歓声が上がった。
ファウルがあり、そこからセットプレーが始まる場面。
ゾロは腕立て伏せを続けつつ、その視線を画面に向ける。
『背番号10』を背負った小柄なベテラン選手が、フリーキックを放つ。
蹴られたボールは大きな美しい弧を描き、ゴールキーパーの手に当たる事なく、地面に吸い込まれる様に落ちて行った。
その瞬間、再び大歓声が起こった。
フリーキックが決まり、選手達が笑顔で抱き合っている。
どうやら、国の代表戦の様だ。
決めた場面が三回、カメラアングルを変えた映像が映し出される。
「……へえ、凄えな……シュートって、あんなに曲がるもんなのか」
ゾロは腕の動きを止めて、起きあがる。
クローゼットからバスタオルを取り出し、汗を拭いながらソファーに座り、画面に見入った。
画面が切り替わる。
ユニフォームは同じだが、先程とは違う選手が映し出された。
目付きの鋭い精悍な顔立ちをしている。
あの『背番号10』の選手よりも少し大きいが、やはり小柄な体で、大柄な選手を相手に怯まず立ち向かっていた。
ボールを相手選手に取られまいと、倒されそうになっても決して倒れず、味方に素早くパスを送った。
その闘志が、画面越しに伝わって来る。
(……あいつ、いい目してやがるな)
ゾロの口端が、自然と上がる。
(……戦うのは、どの世界でも同じだな)
そう呟く声が、テレビの大歓声と重なった。
前半が終了し、選手達がロッカールームへと引き上げて行く映像が流れる。
