第11章 ・東京
「ロキさん、お連れのお兄さん……新しいお友達?」
「Yeah!そうさ。名前はロロノア・ゾロ。ちょっとお堅い奴だけど、Nice Guyだぜ。なあ、Brother!」
ロキはそう言って、ゾロの大きな背中をドン、と叩く。
「……痛えな。もう少し軽く叩け」
実際は大して痛くもないのだが、ゾロは眉間に皺を寄せ横目で睨んだ。
青い髪のキャストが、微笑みながら酒を勧める。
「ゾロさん……って言うんですね。そんな怖い顔しないで、楽しんで下さいね」
ゾロは彼女に鋭い眼差しを向けつつ、酒の入ったグラスを、その大きく無骨な右手で受け取った。
カラン、と高い氷の音が響く。
無造作にグラスを傾け、それを煽った。
ゾロの太い首筋、そこに浮き上がる血管……酒を飲み下す喉仏の動きに、彼女の視線が止まる。
その男は、煌びやかな店内とは真逆の、荒々しく力強い『武人』のオーラを纏っていた。
ふわりと鼻先を掠めるピートの香りと、彼の側から漂う微かな鉄と爽やかな汗の匂い。
彼女は、その圧倒的な存在感に息を飲んだ。
自分達の様な夜の華を、彼は決して『女』として値踏みしていない。
ただ『独りの客』として、差し出された酒を対等に受け取っている。
酒を口にした彼の横顔が何処となく和らいで見え、彼女は思わず微笑んだ。
しかし、相変わらず無言で淡々と飲み続けるゾロに、ロキは呆れて苦笑する。
「お前、あんまり怖い顔して飲んでんじゃねえよ。みんなビビってんじゃねえか……それでなくたって、隻眼で厳つい顔してんだからよお」
「……大きなお世話だ。おれは何時も、こんな顔だ」
その会話に皆の間に笑いが起き、逆にその場の雰囲気が和らいだ。
ロキは深い溜息を吐き、わざとらしく肩を竦める。
「全く……本当ノリの悪りぃ奴だな。よしみんな、もう一本シャンパン行ってみようか!」
ロキの声にキャスト達が黄色い声を上げる。
が、しかし、ゾロは変わらず、である。
ロキは無愛想過ぎる相棒に、頭を搔いた。
「お前、思ったんだけどよ……女の子に興味ねえのかよ。イイ女見て、付き合いてえー、とか、ヤりてぇー、って思った事、ねえのか?」
「……ねえよ。おれは、お前みてえに女好きじゃねえ」
「……ま、まさか、男が好き……って訳……じゃねえよな……?」