• テキストサイズ

【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


ホークスside

「……了解。東ブロック、制圧完了」

通信を終えたその声は、普段よりも低く、乾いていた。

焦げた匂いが立ちこめる廃ビルの屋上で、
ホークスは無言で空を見上げる。

青空なんて見えやしない。
曇った視界は、目の前の敵ではなく――
もっと遠く、誰かの姿ばかり追っていた。

「……彼女の居場所、まだ掴めないんですか」

仲間のヒーローがぼそりと漏らす。
その一言に、小さく笑って誤魔化した。

「まぁね。気配くらい、どこかに落ちてんだろ」

冗談めかした声。
でもその胸の奥は、張り裂けそうなほど苦しかった。

あの子の“羽根”がないと、
どうにも呼吸が浅くなる。



「ホークス、南側にヴィランの逃走ルートあり」

「……わかった。抑えるよ」

羽ばたく。
いつも通り、冷静に、迅速に。

でも、その道すがら、
誰にも気づかれないように
必ず“影”を探していた。

壊れかけた服の布切れ。
焦げた匂いに混じる、微かな香り。
何気ない足跡のひとつ、
どれもが――彼女に繋がっているかもしれない。



「……何を見てんだよ、俺は」

ひとつ、羽根が落ちた。
それが風に乗って舞うたびに、思い出す。

あの日の笑顔。
名前を呼ばれたときの、あのくすぐったそうな声。

「生きてるって、証明してくれよ。……頼むからさ」

冗談めいた口調のまま、
でもその目だけは真剣だった。

今もどこかで――あの子は。

その想いを胸に、ホークスは再び翼を広げる。

何十件、何百件の任務をこなしても、
ただ一つの影を、ずっと探し続けていた。
/ 664ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp