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【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


想花side

視界が揺れる。
何が起きたのかも分からないまま、気づけば焼けた空気の中にいた。

鈍く響く、瓦礫を踏むような音。
鉄の匂い。油と煙が混じった空気。
……ここは――

『……どこ……?』

目を凝らす余裕もなかった。
ただ、腕の中にいる熱だけが、異様に鮮明だった。

「よォ。気分はどうだ?」

耳元で囁くように笑う、低い声。
いつの間にか、荼毘が私を抱えていた。
腕の中。逃げられない距離。

『……っ』

身体は動かない。
意識はかろうじて保ってるけど、指一本だって思うようにならない。

「なぁ、ちゃんと見ておけよ。
 ここが、ヒーローが“壊した場所”だ。……そして、また俺たちが“取り返す場所”だ」

彼の視線の先には、歪んだ鉄骨。
砕けた壁。
どこかで、何かが爆ぜる音がした。

その瞬間、空気が変わった。

風が動いた――と思ったら、

「想花―――っ!!」

遠くから、声が聞こえた。

……え?

耳が、信じたくて震えた。

「星野さん!!」

「想花っ!!」

叫びながら走ってくるその声たち。
姿はまだぼんやりとしているのに、
心だけが、一気に引き寄せられた。

どうして、ここに。
どうして、来たの。

私、もう、助けられる資格なんて……

「くそっ、黒霧!!さっさと準備しろ、こっちは割れてんだよ!」

コンプレスの声が怒鳴る。
すぐ横で、荼毘が私を強く抱き寄せた。

「焦ってんじゃねぇよ。……すぐ逃げりゃいい」

囁くその声に、また体がすくんだ。

けれど。

「想花!! 今、行くから!!」

その声は、全部をかき消すように届いた。

『……勝己……』

声にならない。
でも、胸の奥が泣いてた。

――来てくれた。
何もかも、壊れた私を。
それでも「助ける」って言ってくれるんだ。

涙も出なかった。
出るほど、感情が戻ってなかったのかもしれない。

でも確かに、私の心がほんの少しだけ動いた。

まだ、終わってない。
終わらせないって、言ってくれる人がいる。
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