第13章 この手が届くうちに【R18】
ヒーローside
「突入!!全員、抜かりなくいけッ!」
エッジショットの指示と同時に、建物の一角が轟音を上げて崩れる。
その破壊の先を駆け抜けていく、巨大な影。
「星野ーーッ!!」
真っ先に声を上げたのは、オールマイトだった。
目の奥に焼きつくように現れたのは、
瓦礫に囲まれた室内。
その中心で、傷だらけのまま項垂れ、鎖に繋がれたひとりの少女。
「星野……!!」
オールマイトはその姿を抱き上げるように駆け寄った。
だけど――
『…お…るまいと…?』
か細く、震える声が返る。
けれど瞳にはもう、光がなかった。感情の波は、遠くに消えかけていた。
「星野!!大丈夫だ…!私が、今――!」
そう言いかけた瞬間。
「ふふ……やれやれ、これは想定より早いな」
くぐもった声が、室内の奥から響いた。
闇の中から現れるのは、黒いスーツの男――オール・フォー・ワン。
「オールマイト。少し早い再会だが……ちょうどよかったよ。
この子、君の前で“終わらせて”やろうと思ってね」
「貴様……!!」
青白い閃光が、オールマイトの拳から立ちのぼる。
その瞬間、主人公がピクリと反応した。
『やめて……っ』
震える声。
力を振り絞るように、細い腕がオールマイトの袖を掴んだ。
『……もう、…いい』
「星野……?」
その言葉の意味を飲み込む前に――
「回収だ、黒霧」
闇が渦を巻き、黒霧が現れる。
「…オールマイト!!」
エッジショット、シンリンカムイが叫ぶ中、
オールマイトは想花をさらに強く抱きしめた。
「行かせるものか!!この子は――!!」
けれど。その声は、ほんの微かな囁きだった。
『……私だけでいい。だから……』
その瞬間、黒霧のワープが主人公の足元を包み込み――
「やめろオオオオッ!!」
咆哮が響くより早く、
少女の身体は、オールマイトの腕の中からスッと消えた。
――手の中から、ふっと消えた温もり。
掌に残ったのは、かすかに震えていた小さな指先の感触だけ。
建物の中を静けさが満たす。
「……すぐそこにいたのに……!!」
だけど、誰も、誰一人、追いつけなかった。
その場にいた全員がわかっていた。
彼女は――自分ごと、敵の手に戻ることを選んだのだ。