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【ヒロアカ】re:Hero

第12章 あの日の夜に、心が還る


想花side

『……ん、っ……ぅ……』

遠くで誰かの声がした気がした。
霞んだ視界に、焦げた匂いと、土の匂いが重なる。

……ここ、どこ……? 森じゃ、ない……?

思考がまだぼんやりしている。重たいまぶたをなんとか持ち上げようとした、そのとき――
背中に、熱。息を呑むより早く、低くざらついた声が耳を刺した。

「起きたか」

――……この声、知ってる。

『……や……っ……』

喉が乾いて声が出ない。
それでも身体を動かそうとした瞬間、ぎゅうっと、強く、腕がまわされる。
熱い。強い。逃げられない。

「せっかく捕まえたのにさ、逃げんなよ」

耳元で笑うその声に、心臓が凍る。
夢じゃない、これは……あのとき、街で――

『……ぅ、く……っ』

足も、腕も、動かない。震えて、ちからが入らない。
それでも、胸の奥で「離れなきゃ」って叫び続けてた。

「いい子にしてろよ。ここからは……面白ぇもんが見れそうだからさ」

狂気を含んだ声が、首筋に落ちる。
助けて、誰か――

そのときだった。
――ひゅうん、と風が裂ける音がした。

「うわあああああああッ!!」

頭の上から落ちてくる、誰かの悲鳴。
土煙が目の前で弾けて、何かが地面に叩きつけられる。

『っ……!』

目の前に現れたのは、赤いマント、仮面の男――知らない人。

『誰……?』

思わず漏れた声に続いて、
もう一度、上から三人の影が着地する。

「想花――!!」

『……しょ、うと……?』

「星野さん!!」

焦凍。緑谷くん。障子くん。
――なんで、ここに……

嬉しいのに、動けない。声すら、すぐに出せない。

「来やがったか。さて……どうすっかな」

荼毘が、ゆっくりと私を抱く腕に力を込めた。

熱くて、苦しくて、何より、怖い。
なのに、身体はびくともしない。

……お願い、早く……逃げて……

胸の奥で、言葉にならない叫びだけが、かすかにくすぶっていた。
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