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【ヒロアカ】re:Hero

第12章 あの日の夜に、心が還る


森の奥、かすかに焼け焦げた匂いがまだ残っていた。

『この場所……間違いない。想花の……』

轟の目が木々の合間を鋭く走る。
薄暗がりの中、小さなものがひらひらと落ちていた。

それは、白銀に淡く透けた羽根――
想花の翼の、一部。

「……羽根……?」

緑谷がかすれた声でつぶやいた。
障子も、常闇も、その場に立ち尽くす。

「ここで戦ったのか……?誰と……」

地面には、焦げ跡のような黒い痕。
ただのいたずらや訓練で出る熱じゃない。
それは、“戦闘”の爪痕だった。

「まさか……もう捕まったのか?」

誰もがその言葉を飲み込んだまま、声にできなかった。

静かすぎる森。
まるで“何か”が終わった後のような、嫌な空気が肌にまとわりつく。

「……かっちゃん?」

緑谷がふと、違和感に気づいたように振り返った。

「……かっちゃん? どこ……?」

その場には、もう爆豪の姿はなかった。

「…………?!」

胸がざわつく。空気が一変したような感覚。

「おや……ようやくお気づきですか?」

背後から、ねっとりとした声がした。

ぞわり、と全身の毛が逆立つ。

慌てて振り返ったその空に、
仮面をつけた男が“浮かんでいた”。

燕尾服のようなマントをはためかせ、
その手には――ビー玉。

中で、小さな何かが動いている。

「もうひとりの“お目当て”も、ありがたく頂戴しました。
……どうか、後の収穫もお楽しみに」

月明かりが反射して、ビー玉の中に映る。
そこには、怒りの形相のまま封じられた――爆豪勝己の姿。

心臓が、冷たい手で握られたように痛む。

戦いはまだ、終わっていなかった。
むしろ、今からが“始まり”だった――
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