第12章 あの日の夜に、心が還る
夕食を終えた後、あったかいお風呂に浸かって──
すっかりリラックスした私たちは、ぽかぽかのまま談話スペースに集まっていた。
お風呂あがりの髪をタオルでまとめた三奈ちゃんが、ぐぃ〜っと伸びをしながら言う。
「……ふぁ〜〜あ。合宿ってさ、ハードだけど、楽しいよね〜。
カレーも美味しかったし、なにより……男子の料理レベル、高すぎじゃない?」
「特に爆豪くんとかね!めっちゃ手際よかったし!」
お茶子ちゃんが楽しそうに笑いながら頷く。
『あはは……勝己、料理に関しても凄いからね』
「うんうん、それな〜」と拳藤ちゃんも加わる。
「でもさ〜〜〜……アレは反則っしょ?自然に連携しちゃってる感じ。あんたと爆豪、見てて息ぴったりすぎて、正直ちょっとドキドキしたわ」
『え!?そうかな……』
「ふふ〜ん、本人は気づいてないやつだ〜コレは〜〜」
三奈ちゃんがにやりと笑う。
「でも、轟くん顔凄かったよ〜、ずっと見てたし」
お茶子ちゃんが小声で耳打ちしてくる。
『……え、焦凍?』
「うんうん。ほら、あの目……なんか“まったく”って感じだったよ〜。
やきもち……って言ったら、怒られるかな?」
『……そ、そんなことは』
勝己と一緒にいるとき、あの静かな視線が何度か刺さった気がする。
怒ってるわけじゃないのに、どこかひっかかるような、あの目──
拳藤ちゃんが、急に肘でつついてくる。
「でさ、正直どーなん?」
『……え、なにが?』
「回原のアレ。今日は攻めてたけど」
『あ、あれは……』
「ずるい、とか言ってたしなぁ〜〜!?」
三奈ちゃんがひゃ〜っと言って、みんなで笑い合う。
……でも、冗談みたいだったのに、目が本気だった気がして。
思い出すとちょっと、ドキッとする。
『……なんか、いろいろ一気にありすぎて、考える暇なかったかも』
「そうそう、青春は勢いが大事だからな〜!」
拳藤ちゃんがにかっと笑う。
「でもま、どいつもこいつも星野のこと好きすぎでしょ」
三奈ちゃんがあきれたように言って、みんなでまた笑った。
夜の合宿所に、女子だけのやわらかい時間が流れていた。
──こうやって、少しずつ、
誰かの気持ちにも、自分の気持ちにも気づいていくのかな。
もうすぐ消灯の時間。
でも、なんだか今夜はちょっとだけ、胸がざわついて眠れそうにないかもしれない。
